98年8月20日
目次へ    癌とのお付き合い



  3.胃癌に関する知識

    3-1.癌はDNAの異常によるもの

    3-2.高分化型腺癌と低分化型腺癌

    3-3.早期癌と進行癌

    3-4.治療法

    3-5.インターネットで調べる

3-1.癌はDNAの異常によるもの(DNAの病気) 正常細胞は、外因性又は内因性の変異原物質により、ガン遺伝子ならびにガン抑制遺伝が 変異することにより癌化する。 しかしそのガン細胞が浸潤性、転移性の悪性度の高いガンになるためには、さらにDNA の変異が必要である。(岩波新書 杉村 隆他著「がんと人間」より引用) 外因性変異原物質とは例えばタバコの煙とか魚や肉の焦げた部分にある物質であり、内因 性変異原物質とは活性酸素をはじめ体内で作られる色々な酵素がある。これらの変異原物 質によって正常細胞のDNAが傷つけられるが、通常は修復酵素が働いたり、修復しきれ ない場合は細胞の自殺機構が働いて細胞が死ぬことによってガン細胞の発生を防ぐように なっている。 何らかの原因でこの防衛機構が働かなくなるとガン細胞の増殖に歯止めがかからなくなる。 ガン細胞は増殖に必要な栄養を摂るため、血管を新しく作り、正常な細胞を破壊しながら さらにどんどん栄養を盗り尽くすため、人間は死んでしまうことになる。
3-2.高分化型腺癌と低分化型腺癌 胃癌は大きく分けて高分化型腺癌低分化型腺癌の二つの発生経路があると考えられて いる。 高分化型腺癌は老齢変化などで胃に出現する慢性胃炎を母体として発生すると考えられ、 組織学的には胃の腺管と類似した構造で、肉眼的には比較的限局したものが多い。 (やさしく言うと、高分化ガンは正常な細胞に似た、比較的おとなしいガンということ) 一方低分化型腺癌は慢性胃炎を母体とせず、腺管を作ることなく、びまん性に増 殖する特性を持ち、肉眼的には境界が不鮮明な浸潤型を示すことが多い。 (要するに、たちの悪い治りにくいガン) (メディカ出版 中尾 昭公編「消化器外科NURSING」より一部引用) 小生はこの高分化型腺癌で粘膜層に留まっていたため、内視鏡による切除が可能だったの だと理解している。
 
3-3.早期癌と進行癌  正常な胃壁は内腔の表面より第1層から第5層まで分かれている。 先ず表面に粘膜(m)があり、その下に白っぽい粘膜下層(sm)が、さらに下に筋肉の層で ある固有筋層(mp)、そして漿幕下層(ss)、漿幕(s)、と続く。ガンがどこまでの層を 破壊しているかによってm癌、sm癌などと呼ぶ。このsm癌までが早期癌、固有筋層を 越えて下まで達していると進行癌と呼ぶ。 分化型腺癌は早期に発見されると約90%の治癒率である。 癌が他の臓器やリンパ節に転移すると、体の状態が極度に悪化し手術ができなくなる。 これが末期癌といわれるものである。 この区分は臓器によっても異なり一つの目安にすぎない。 (日本実業出版社 末舛 恵一監修「がんとはどういう病気か」他より引用)
3-4.治療法 (愛知県がんセンター 中央病院・研究所より引用)
胃がんに対する治療法にはいくつかあります。手術療法が一般的ですが、抗がん剤を用いた薬物療法もあります。放射線療法は、特殊な場合には行われていますが、胃がんに対する治療法としては一般的ではありません。
 
【手術療法】
手術は胃がんに対して最も標準的な治療法で、がん細胞をすべて取り除くことで治癒を目指します。簡単に言えば、がん細胞のすべてが身体から取り除かれれば、それはすなわち、がんが治ったということになります。ただ、この場合の「すべて」とは、目に見えない細胞のひとつひとつも含めてということです。しかし、手術はあくまで肉眼で見えるものを切除する局所療法ですから、がんがその局所にとどまっていれば最も確実な治療法になりますが、目に見えないレベルでがん細胞がその局所を越えて広がっている場合には、がんをすべて取り除くことはできません。再発が必至ということになります。その場合は再発の状況により再度手術を考慮したり、切除が困難であれば抗がん剤治療や放射線治療が行われます。
 
1) 内視鏡的粘膜切除術
一部の早期がんに対して、内視鏡を使ってがんを切除することが行われています。ただし、リンパ節はまったくの手つかずになるため、リンパ節転移の可能性がある人に対しては行えません。胃がんに対する内視鏡的治療には、スネアという金属製のワイヤーを用いるEMR(内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic mucosal resection)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic submucosal dissection)があります。EMRには1)2 channel 法(ストリップバイオプシー法)、2)Cap 法 (先端フード法)があります。後者には、1)ITナイフ切除法、2)先端系といわれるFlushknife、Hookknife、needleknifeなどを用いる方法に2大別されます。 内視鏡的治療の適応は、リンパ節転移の可能性がないことが原則であり、「胃癌治療ガイドライン」上、組織学的には、適応内病変は分化型で2cm以下の粘膜内癌。肉眼型は問わないが、陥凹型では潰瘍を認めないもの、とされています。適応拡大病変に関しては、慎重な術前診断、検討会での検討に基づき、完全一括切除が可能と判断されるものに関しては、治療を行っております。最近では治療器具や内視鏡手技の向上により、大きな病変でも適応を選べば、一括切除できるようになってきました。
胃ESD(IT knife) :Ua型早期胃癌
 
2) 開腹手術
一般的には、みぞおちから臍横まで約20p、縦に切開し、胃と周囲のリンパ節を併せて取ってくる手術です。お腹の中を十分に観察でき、あらゆる状況にも対応でき、手術操作が確実にできることから、今でも胃がん治療の重要な手技のひとつです。胃の切除方法には大きく分けて3通りあります。胃の出口(幽門)側を切除する幽門側胃切除、胃を全部切除する胃全摘、胃の入口(噴門)側を切除する噴門側胃切除です。これらは、がんが胃のどこにどれだけの範囲で存在するかやその進行度によって決定します。また同様に胃がんの範囲や進行度によってリンパ節郭清(リンパ節をきれいに取り除くこと)の範囲も変わります。ある程度進行した胃がんに対しては、胃から少し離れたリンパ節まで郭清するD2郭清を行い、早期胃がんの場合にはこれよりも更にリンパ節郭清の範囲を縮小します。高度進行胃がんの場合に薬物療法と組み合わせた更に広い範囲の拡大リンパ節郭清が行われることもあります。
 
3) 腹腔鏡下手術
腹腔鏡下の胃がん手術は1990年代にわが国で初めて行われました。腹部に5mm〜12mmの穴を数か所開けて、専用のカメラや手術器具を挿入し、モニター画面で腹腔内を観察しながら、器具を操作して胃の切除を行う方法です。腹腔鏡下手術のメリットは、一般的には、傷が小さく手術後の疼痛が少ない、術後呼吸機能の低下が少ない、回復が早いため早期に退院できる、より鮮明に拡大した画像で血管などを確認できる、などが挙げられます。 腹腔鏡下胃局所切除術 腹腔鏡下で胃の局所切除を行います。胃局所切除術では、胃周囲のリンパ節の郭清を行いませんので、リンパ節転移のリスクが極めて低いタイプの腫瘍(胃粘膜下腫瘍など)に限定して行われています。 腹腔鏡下胃切除術 最近では、早期胃がんだけでなく進行胃がんに対しても、腹腔鏡下にリンパ節郭清を伴う胃切除術が行われています。当院では胃がん治療ガイドラインに準じて、Stage Iの胃がんに適応を限定して行っています。
 
胃は食べたり飲んだりした物を一時的に蓄えておくところです。胃がんに対して手術を受けると、胃が小さくなったり無くなったりしてしまいます。消化や吸収に大きな変化はありませんが、一度にたくさん食べられなくなりますので、1日の食事の回数を増やすなどの工夫が必要になってきます。また、食べたものが早期に腸へ流れ込むことによる症状(下痢、腹痛、冷汗、立ちくらみ等:ダンピング症状といいます)が出たりする場合があります。ゆっくり時間をかけ、よく噛んで食べるようにする必要があります。
 
※術後補助化学療法について
これまで、胃がんの治癒切除(目に見えるレベルではすべて胃がんを切 除できた)後に再発予防に薬物療法を行うこと(これを「補助化学療法」といいます)の 有効性をしっかりと示した研究はありませんでしたが、最近、胃がんの治癒切除後にある 種の抗癌剤を一定期間内服することにより、再発を予防する効果のあることが示されまし た。現在では、ステージIIとIII(ただし早期胃がんを除く)の胃がん治癒切除後には、テ ィーエスワンという抗癌剤を1年間内服することが、 我が国における標準治療と考えられています。
 
【薬物療法】
化学療法は抗がん剤を使用する目的によって、(1)手術で取りきれずに残ってしまった少量のがん細胞を死滅させて再発を予防する(これを術後補助化学療法と言います)、(2)がんに伴う苦痛を改善したり予後を延長させる目的で使用する、の2つに分類されます。 (1)の術後補助化学療法は、手術で完全にとりきれなかったがん細胞を死滅させることで、手術単独では治らない患者さんを治す治療です。 一方、この治療は手術で治ってしまう患者さんにまで抗がん剤を投与することが問題です。使用する抗がん剤の効果と副作用を検討した結果、ティーエスワンの1年間の投与が有効であることが知られています。(2)の目的で用いられる主な抗がん剤は5-フルオロウラシル、シスプラチン、イリノテカン、タキサン系薬剤(パクリタキセルとドセタキセル)です。最初に行うべき治療は5-フルオロウラシル系薬剤であるティーエスワンとシスプラチンを組み合わせた治療法です。この他にも、ティーエスワンにタキサン系薬剤を組み合わせた治療法も期待されていますが、現在までに有効性の証明はされていません。この他、ティーエスワンとシスプラチンにタキサン系薬剤であるドセタキセルを組み合わせた3剤併用療法も検討されていますが、その効果や安全性の十分なデータはありません。 最近の研究で、胃がんの約20%にHER2(ハーツウ)という細胞増殖にかかわるたんぱく質が多く発現していることが分かりました。2009年の米国臨床腫瘍学会において、HER2を多く発現している胃がんにHER2の働きを抑える分子標的治療薬(トラスツズマブ)を併用すると、予後の改善することが報告されました。この薬剤は乳がんの治療薬として使われていますが、近い将来、胃がんにおける治療薬になると期待されています。 また、手術成績向上のため、手術可能な患者さんに対する術前化学療法の研究も進んでいます。高度リンパ節転移症例に対するティーエスワンとシスプラチンによる術前化学療法は、術前化学療法なしに比べて優れている可能性が高いことが示されています。現在、高度リンパ節転移を伴う症例に対して、術前化学療法がおこなわれるようになってきています。
 
【放射線療法】
放射線は、胃がんに対する効果が弱いうえに正常な大腸や小腸を損傷し やすいため、通常は胃がんに対して放射線を照射することはありません。しかし、脳や骨 やリンパ節などに転移が起きたときに、その転移部位に放射線をかけることがあります。
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  その他
 胃がんは治る病気になりつつありますが、ある境界を超えるとまだまだ恐ろしい病気です。この病気から身を護るためには、やはり早期発見が最も大切なことだと思います。症状が出る前に、年に1度の検診を積極的に受けられることをお勧めいたします。  また、がんが見つかった場合に慌てないことです。がんは慢性疾患ですので1カ月や2カ月で急に進むものではありません。信用のおける病院でしっかりとした検査を受けてがんの拡がりについて正確な診断をしてもらい、それに基づいて過不足のないしっかりとした治療を受けられることをお勧めいたします。  また、ご自分の体のことですから、納得してから検査や治療を受けるべきです。医者が言うからとか家族の誰それが言うからといった姿勢では治るものも治りません。自分から積極的に病気の治療をするのだという気持ちになってください。  もし私たちでお役に立てることがありましたら何でも相談してください。がんセンターで治療を受けるおつもりがない場合でもセカンドオピニオンなどの受診方法があります。その時には、何も資科がないと正確なご返事ができませんので、紹介状や写真などをお持ちいただけると幸いです。また最近内服されている薬の中に「血液をさらさらにする薬」が多く処方されていますので、当院での内視鏡検査を希望される場合には薬剤の名前がわかる書類を持参していただいた方がよいと思います。
(愛知県がんセンター 中央病院・研究所より引用 終わり)
 
3-5.インターネットで調べる  以上の知識は主に本を購入して調べたものであるが、インターネットで調べると実に多くの 知識を得ることができる。(Googleなどで 「胃がん」と入れて見て下さい) その他、日経ビジネスに紹介されたガンと闘うためのホームページ集を転載してみます。   開かれたコミュニケーションのための医療情報    ・市民、患者家族、医療関係者などからなるボランティアグループによる医療関連情報   キャンサーネットジャパン    ・・・米国立がん研究所などのガン情報を翻訳して掲載    ・闘病に役立つ情報をボランティアが翻訳   メルクマニュアル    ・・米国の薬品メーカー、メルクが作った医学辞典の日本語版。   がん情報サービス    ・・国立がんセンターが提供するガンの詳細な医療情報サービス。


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