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TOPページへ    山  私

南アルプス前衛笊ケ岳
           目  次
1、霧島・桜島・屋久島(高校山岳部への寄稿文)
2、ワンゲル夏合宿(浪人生活の果て)
3、山と小児マヒ

2、ワンゲル夏合宿(浪人生活の果て)

この駄文は医学部入学の夢が断たれ、思いもしなかった学校へ入学して少し
落ち着いてきたとき「ある山登り」という題名で寄稿したものです。

「夏」この言葉の響きが今ほどさわやかに僕の心に映った事はなかった。
何も心に引っかかるものが無くエンジョイできる夏、こんな夏をどれほど
待ち望んだことか。誰もいない山の中の湿原の鮮やかな緑の中に浮かぶよ
うに咲き誇る黄色い花の大群落、生の苦しみを忘れさせてくれるのにこれ
以上のものがありえようか。甘美なる空気にひたり友と語り、歌う日々、
それがはかない幻影であればこそ美しくもあり、僕はそれに没頭した。
ある特殊な環境における特殊な時間の幸せに僕はできるだけ完全に浸りき
りになりたかった。生きていることの意義、欲望と良心の問題、それらの
何一つ解決できず悶々と生きている自分を忘れたかったのだ。
こんな態度で山に登るのは邪道なのだろうが、僕にとっては山登りはそれ
自体に楽しみを見出しているのは事実としても、それ以上に現実を逃避す
るためにあると思う。目前に展開する現実の圧倒的重さに耐え切れずに山
へ登り、現実を忘れようとしてかえってそれが強く意識されるという皮肉
が待っているというのに、でもわずかの時間 僕の心には自然の偉大さと
美しさのみが占領してくれる。その宝石のように貴重な時間のために僕は
山に登っている。
長い受験時代の傷を癒すためにも僕は何もかも忘れたい。 そして後一度
別個の人間になって理想を見つけ直し、新たに踏み出す勇気を持ちたい。
そんな甘い希望を持って僕は山へ登っている。でも、僕は山は決して僕の
希望をかなえてくれないことを理解している。これは純粋に僕個人の心の
問題なのだから。
でも僕は山へ登る。いつか山へ ただ山へ登るために登るようになるまで
僕は登る。そしたら山は又、新たな面で僕をつかまえるだろう。


3、山と小児マヒ

物心ついた頃、私は小児マヒに罹っていました。
小児科医であった父は、あらゆる手立てを尽くして麻痺を少なくしようと
努力をしてくれました。
脊椎に何回も注射をされた事を思い出します。
また小学校に入るまでは大変な虚弱児で、しょっちゅうリンゲルを打たれ
ていました。
今でも右足の大腿部は、左に比べ周囲が10cm程細いままですが、日常
生活には支障はありません。
右足でケンケンができないとか、左足が滑ると体重を支えきれないなどの
不便はありますがほぼ健常者の生活ができるのはやはり父の存在が大きか
ったと思っています。

小学校の頃は、この足のせいでいじめ
られたり、運動会では毎年屈辱感を味
わっていましたが、両親は全く同情す
るそぶりを見せず、私も足のことであ
まり深刻になる事は殆どありませんで
した。
「なりたくてなった訳でもないし、悪い
ことをした罰でもない」というのがその
頃からずーっと思い続けてきた気持ち
のよりどころでした。                       田代山
とはいえ、やはりこの病気は私の精神形成には抜き難い影響を与えている こと
も事実です。

小学校や中学の運動会のとき毎回歌わされた、「歓喜の歌」だったかな?
「若い心と感激に、燃えよ若人、胸を張れ・・」という歌がありました。
この中の「優勝劣敗」という言葉がいつも心に引っかかり、メロディーと
しては良い歌なのに聞くたびになんとも言えない気持になったものです。
スポーツは、何をやっても運動神経が無いのと、この足のせいで全く駄目
でしたが、唯一山登りは運動神経が殆どいらずただ一生懸命我慢していれ
ば何とか人並みについていけるスポーツでした。
もちろん、頂上に立ったときの感動も大きな魅力でし
たが、自分より先にばてる奴や、遅れる奴がいること
が何よりも私の劣等感を癒してくれたのです。
登っている間は何も考えず、ただ地面を見つめ、汗ま
みれで、もがくだけというのが私流の山登りで、楽し
みながら登るという境地には達することができません
でした。
会社の研修会で私は「ストレスに強い」とか「形勢が
悪くなると攻撃的になる」と評されますが、この意味
でもまだ精神的な小児マヒは癒されていないのかも
知れません。
家内にも「もう少しゆとりを持って」とか「意固地」
だとか「そんなに窮屈に考えなくたって」とか言われ
ながら結局、改善が見られずマヒ状態のまま人生を
       谷川連峰稜線
終わりそうな形勢になってしまいました。 まあ、しょうがないか

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